講演記録

コニー・ヘデゴー デンマーク気候エネルギー相

コニー・ヘデゴー
デンマーク気候エネルギー相

基調講演

コニー・ヘデゴー デンマーク気候エネルギー相

お集まりのご来賓の皆さん、今回ご招待をいただいて大変ありがとうございます。とてもうれしく思っております。以前、私はジャーナリストをしておりましたので、特にこのように、朝日新聞の130周年という記念の会議に呼んでいただいて、大変うれしく思っております。

さて、私、実は日本に来るのは初めてです。ハンス・クリスチャン・アンデルセンの国(デンマーク)から日本に参りますと、アンデルセンの書いた有名なおとぎ話を思い出すような気がいたします。さまざまな面で違いは見られますが、東と西で共通点も多いと思いました。日本人もデンマーク人も生の魚が大好きですし、静ひつでミニマリスト的なデザインが大好きです。また、国旗も同じ色を使っていますね。

デンマークは、再生可能エネルギーと、エネルギーの効率化で豊富な経験を蓄積してまいりました。しかし、エネルギーの効率化では、何と言っても世界のリーダーは日本であります。このように重要な会議の場でお話しできることを大変名誉に思っております。

さて、ここでは「G8リーダーへの提言」というテーマが掲げられています。日本がG8サミットの議長国を務めるときに、温暖化問題を大事なテーマとして選んだことを大変うれしく思います。来年の12月にはデンマークでCOPが開かれ、デンマークが議長国を務めるわけですが、野心的で包括的な国際的な気候変動の合意を得なければならないと思います。長期目標と中期目標の両方が必要だということをメッセージにしたいと考えております。

炭素価格を基礎とし、経済的なインセンティブやその他のインセンティブを提供していかなければなりません。グローバルな市場である「カーボンマーケット」でのキャップアンドトレードが必要なのです。気候変動の分野では、私が知る限り、これが政治的にも最も強力な手段であります。これ以上によいツールは、ほかにありますか? ですから、G8の首脳たちに対しては、EUのお手本に見習ってほしいと思います。2050年に向けての目標だけではなく、2020年に向けての目標も、ぜひ掲げていただきたいと思っています。

拘束力のある目標を持つことで、世界中の投資家に明確さと予測可能性を提供することになります。2050年に目標を立てたならば、より短期的な目標は要らないではないかと思うかもしれません。あまりにも安易な政治家にとっては、42年先のことならば決めやすいですよね。しかし、我々は慎重に考える必要があります。遠い未来の話ではなく、今から行動をとり始めるための目標を掲げる。そして、いかに今から始めなければならないか、ということを強調したいと思います。

デンマークの例を挙げましょう。京都議定書のもとでは、削減目標21%ということでありました。これは2012年前に、ということです。こういう厳しい目標がなければ、政治的なイニシアチブもとれなかったはずです。目標を掲げるということは、それに向けてのプロセスを、スピードアップすることにつながるのです。

エネルギー・インフラ投資のライフサイクルは、30年から50年と言われております。投資家にとっても、投資がはたして利益を上げるのか、回収できるのかどうかということを知りたいのです。炭素価格について予測できるということで、投資家が今から健全な投資の決定ができるということにもなります。行動をとるのをこれ以上先送りしてはいけません。「時間」が重大な要素であります。マーガレット・ベケットさんからもお話がありましたように、時間がもうなくなってきているからです。

では、現在の状況を変革するために、勇気を持って、社会のあらゆるレベルに対し、「今から変化をせよ」と言わなければなりません。そのためのインセンティブも与えなければなりません。我々に与えられた課題は、成長と発展を妨げることなく、市民、企業、都市、国、経済全体がいかに炭素の排出量を下げるかということです。福田総理も演説されたように、例えば、中国やインドや、ほかに今成長しつつある国に対し、成長をやめろというわけにはいかないのです。アフリカに対しても、そんなことは言えません。持続可能な成長でなければならないということです。

IPCCの第4次評価報告書の中で明快に言われていることですが、気候変動というのは、人類起源であって人間活動が原因であるわけです。人間が行動をとらなければ、すべての企業、すべての家庭、すべての人々、すべての国、すべての人にとって悪い影響が出るということです。我々は躊躇してはなりません。結果がより厳しく、より破滅的であるならば、経済的な影響もやはり大きいと言えるでしょう。往々にして私どもは、予算をどうしようかと考えますが、しかし行動をとらなければ高くつくということを忘れてはなりません。

将来の合意を考える中で、我々は全世界の排出量が向こう10年から15年で増大するのをとめなければなりません。2050年までには半減しなければなりません。これらの世界的な目標を達成するためには、社会経済構造を低炭素社会に向けて変えていかなければなりません。これは、もちろんやさしいことではありません。しかし、可能だと強調したいと思います。今こそ、世界が気候変動の脅威に対処しなければならない時期であります。我々の挑戦課題としてとらえていかなければなりません。

コペンハーゲンで開かれる来年のCOPに向け、野心的に考えていかなければなりません。貧困の撲滅もやはり考えなければならない。危機や破局的な状況ということではなく、着々と対策をとっていくことによって対処していかなければなりません。持続可能な開発としてより広くとらえていく必要があります。危機ではなく、チャレンジとしてとらえるべきであります。

2009年のコペンハーゲンのCOPですが、野心的な目標に向けて我々は進んでいきたいと考えております。昨年の12月のバリでの会合では、すべての国々がテーブルの場に着くことができました。そして、行動計画にも合意されました。より大事なことは、2012年以降のグローバルな枠組みについて、2009年までに決めるということにコミットしているということです。

しかし、単に合意を見るというだけでは不十分なのです。ある人から、「2009年については心配する必要ないよ。成功するに決まっているから」と言われました。20年にもわたって気候変動の会議がずっと続いてきた。すべて終われば、みんな成功したと言われるではないか、と。ただし問題は、第1回の気候変動会議以降、排出量は増え続けているのです。そこが問題なのです。ですから、合意を見るというだけではなく、我々は野心的な合意になるように努力しなければならないということです。バリ行動計画は、ロードマップを提供してくれております。

いつ、何を、どのように議論するかということについて、私は明快な共通の理解があると思っております。京都議定書の中核的な要素の上に構築する必要があるということです。基本的にやるべきことは、京都議定書の最善の要素をずっと残していくということです。そして、共通の努力をさらに向上させるということです。多くのアイデアが出されております。これは日本だけではありません。多くの国からいろいろなアイデアが出ております。我々の目の前にあるいろいろなオプションを明確に規定する必要があります。どういう可能性、どういう技術、どういうポテンシャル、どういうオプションがあるのか、つぶさに検討しなければなりません。

2009年になれば、より交渉モードに入って、本格的に始動できるように、さまざまな分析を今年からきちっとやらなければならない。2012年以降の枠組みができないということになりかねませんから、今年からやらなければなりません。

低炭素社会を実現することが、我々が目標を達成する上で欠かせない要素です。排出量を削減し、環境を保全し、そして経済成長も見ていかなければなりません。言葉をかえるならば、経済成長を見つつ、エネルギーの消費や排出量の増大は避けていかなければならないということです。往々にして、こんなのは無理だ、不可能だという反応があることでしょう。しかし、私は可能だと言いたいと思います。経済成長というのは、よりよい気候、よりよい環境の対極にあるとは、私は考えないからです。逆に、そうではなく前提条件だと思うのです。経済成長が前提にならなければ、環境保全もうまくいかないということです。政治的な決意を持って、賢い投資をし、そして、革新的なビジネスと協力をすれば、マーケットメカニズムやコスト効果の高い手法で進めれば、我々が直面するこういう課題からもメリットを引き出すことはできるのです。

ここでデンマークの事例を挙げて説明してみましょう。これまでの25年間、デンマークのGDPはおよそ70%伸びております。しかも、エネルギーの消費については、ほとんど安定化しております。再生可能エネルギーは、70年代はほとんどゼロであったのが、現在では16%ぐらいになっています。エネルギー総消費の16%です。また、国内の電力供給の28%を再生可能エネルギーが占めています。言うまでもないことですが、これはプラスの効果を生んでいます。エネルギーの効率化や、代替エネルギー源の開発に投資をすることによって、デンマークは二酸化炭素の排出量を13~14%も、この12年間で減らすことができました。2012年までにデンマークは、二酸化炭素の排出量を、京都での約束のとおり、21%減少させることができます。

それでは、それが競争力にどういう影響を与えているのでしょうか。経済的に考えますと、確かにこれは不利と思えるかもしれません。実はそうではないのです。実際は、エネルギー効率化の技術の輸出は、10年間で3倍になっています。特にエネルギー効率化技術の輸出は、平均の輸出の伸びの4倍になっているのです。これこそ、生きた証拠ではないでしょうか。最初に動くということ、すなわちリーダーとして先導するということがメリットを生むということです。環境面で競争力を持ち、資源の効率化を図るということが直接的にも間接的にもデンマークの企業を競争のなかで優位に導いているのです。さらに革新的なクリーン技術をつくり出すということが、デンマークの経済成長の中核となっているのです。

ご承知かどうかわかりませんが、地球上の風力タービンの3分の1が、実はデンマークでつくられたものなのです。環境に優しい技術というのも、デンマークの企業、産業界と、デンマーク政府の間で緊密な協力関係がなければ成立しませんでした。プッシュとプルと両方の効果が働いたということです。

新たなグローバル気候変動の合意のためには技術がカギを握ります。気候変動対策の話をするときには、コストに焦点を当てがちです。確かに、気候変動の対策というのは、ただでできるものではありません。しかしながら、技術というのは、気候変動対策が経済的なチャンスにもつながるということを教えてくれるのです。また、ゼロから始めているわけでもありません。IPCCによりますと、温室効果ガスの安定は、今日ある技術の展開でも達成できると指摘しています。もしくは、今後数十年間で商業化されるであろう技術で安定化が達成できると言っているのです。理論的に入手可能というのではなく、商業化されるということです。その技術を使って安定化が可能だと言っているのです。

当然ながら、適切なインセンティブを提供しなければいけませんし、目標設定というのが条件となります。短期中期的には、主に既存の低炭素技術をより幅広く利用することにかかっているでしょう。これらの技術の多くはシンプルなものでありますし、入手可能です。しかも手ごろな値段なのです。費用が高過ぎるとか、貿易障壁があるとか、知的財産権の問題ではないのです。問題は、知識の欠如なのです。もしくは、もっと具体的に言いますと、十分にそのような新しい技術を普及させていないわけです。

我々は、必要な資金を生み出していかなければいけません。野心的な国際的気候変動合意の実現には、そのような資金が必要です。その大半は、どちらにせよ起こる投資の流れになるでしょう。しかしながら、これらの資金の流れを、正しい政策シグナルを送ることで、低炭素の方向に促すことができるのです。

途上国へ向けての先進国からの官民の資金は、最も貧しい途上国のために、低炭素技術の展開を支援するために、重要な役割を演じることになるでしょう。そして、成長している国々を、我々の富める仲間に温かく迎えていくことも必要です。一番成長しているところに新しい技術を供給していくのは、経済的にも合理的だと思います。この問題を解決するには、貧しいところに投資が必要ということです。

スターンレポートによりますと、2050年には地球上の90億人のうち、80億人が途上国に暮らしているであろうと指摘しています。ですから、広範な国際協力がなければ、共通の目標など達成できようもありません。そして、私たちは急いでいるのです。もし90億人の人たちを食べさせ、エネルギーを供給し、住宅に住まわせ、作物をつくり、そして車を運転する夢をかなえ、つまり我々富める国と同じ暮らしをさせるためには、もっとエネルギー効率の高い方法を考えなければいけない。資源も効率的に使っていかなければいけない。気候変動の課題がなかったとしても、こういったことはどちらにせよ、もっと効率的にやらなければいけないのです。

最後になりますが、民間部門がカギを握っているということ強調したいと思います。もっと国の中の枠組みに注目をする必要があるでしょう。新しいエネルギー技術の投資の拡大のための枠組みです。果たして十分なエネルギー効率のための基準があるのか。例えば、エネルギー生産と消費に関して基準があるのか。どうやったら環境に優しい技術を持った外国企業を呼び込んで、新しいグリーンジョブというものを創出してもらうことができるのだろうか。最も役に立つ技術の利用をどうやったら高めることができるだろうか。企業、地域、都市、そして各セクター間で、そのような技術をどうやってもっと利用することができるのでしょうか。

これらの問いへの答えは、国連の交渉だけで見つかるわけではありません。私たちは社会のあらゆるレベルで、さまざまな国際的な場で議論していかなければいけないのです。革新的な新しい技術がカギです。産業と研究機関が一緒になることによって、政府はより前進するための最良の可能性を提供することができるのです。さらに、参入障壁があることから、しばしば新しいよりよい技術が市場から絞め出されています。そのような障壁に対しては、政治的な対応をすることもよいと考えます。

最も重要な課題は、包括的で野心的なグローバル合意を取りつけることです。自然環境には、国境はありません。私たちは、すべての先進国がリーダーシップを発揮し、相応のコミットメントをとるという道を見つけなければいけないのです。厳しい現実を見据えなければいけません。豊かで大きな国々は、より努力をする必要があるのです。

同時に、新興国の貢献も検討する必要があります。つまり、急速に発展する途上国が、その貢献度を高めるということを奨励するための方法を考えなければいけないのです。責任と能力に見合った貢献をしてもらう方法です。

地球は待ってくれません。もしみんなが、ほかの人が始めるのを待って最初の一歩を踏み出さなければ、何も起こらないのです。待ち続けてしまうことになります。そんなことをしている時間はないのです。将来の世代は、そんなことを許してはくれないのです。あなたたちと私たちが責任を担っているのです。今、行動を起こす責任であります。今ある知識に基づいて行動を起こすことが必要です。私たちはあらゆる努力をして野心的な合意を来年コペンハーゲンで取りつけたいと思っています。

すべての世界の協力が必要です。ぜひ日本と、日本政府の協力を楽しみにしております。政界だけではなく、産業界、NGO、メディアの皆様とも協力をしていきたいと思います。みんなの責任だと考えるからです。

ご静聴ありがとうございました。(拍手)