講演記録

岡田克也 民主党副代表、地球温暖化対策本部長

岡田克也
民主党副代表、地球温暖化対策本部長

特別講演

岡田克也 民主党副代表、地球温暖化対策本部長

皆さん、こんにちは。まずこの地球環境シンポジウムにおいて非常に熱心な議論がなされておりますことを心から敬意を表したいと思います。

私はまず総論的なことを少しお話しした上で、民主党が先日出しました地球温暖化対策基本法案の中身、そして、政府の「福田ビジョン」に対する我々の考え方などを中心にお話をしていきたいと思います。

まず、この地球温暖化の問題をどう位置づけるかということです。やはりこれは18世紀の産業革命以来の石炭や石油、あるいは天然ガスという炭素に依存した我々の生活様式を転換するという、人類史上の大きな転換の話であるということをきちんと認識しなければならないと思います。地球温暖化問題への取り組みというのは、人類史上の一大転換の問題であると位置づけるべきだと思います。

ご存知のように、IPCCの報告があります。これについては一部懐疑的な見方もあるわけです。例えば地球の温暖化そのものを否定する議論、あるいは、地球温暖化という事実は認めながら、それが温暖化ガスの結果によるものではないんだといった議論が依然としてある。今でも本屋に行けばその手の本はたくさん並んでいるわけですね。

ただ、私はやはりIPCCにおいて3,000名以上の世界の学者が集まって3年以上議論をして出した結論というのは、これは尊重されるべきだと考えます。

かつ、温暖化ガスの蓄積というのは毎年、毎年進んでいるわけでありまして、後で、いや、読み誤りましたといって急に減らそうとしてもそれはできない。そういう意味では、取り返しがつかない時間との競争の問題であります。あとで間に合いませんでした、すみませんでしたというのでは、これは次の世代に対して責任を果たすことにならないわけであります。

IPCCの報告書の中で大事な点は、温暖化が既に始まっているということ、これを断言されているわけですね。そして、もう一つは、それは産業革命以来の人類の活動によるものである可能性が極めて高く、95%の確率だというふうに言っているわけです。やはりそのことはしっかり踏まえた上で考えていかなければならない、この軸がぶれてはいけないと思います。

科学が既に結論を出したわけですから、次は政治がこれをどう対応していくかという問題になります。ここの軸をぶれることなく我々はしっかりと議論していかなきゃいけないと思います。

炭素に依存しない日本あるいは世界の構築ということは、私は日本にとって、決してピンチではなくて大きなチャンスだと考えるべきだと思います。私もかつて通産省というところに勤めていた時代があります。第2次オイルショックのときに石油を担当しておりました。あのときに見せた日本経済のその柔軟な対応、特に脱石油依存、そして、さまざまなエネルギーの無駄遣いの削減、廃熱の有効活用などによって効率を上げていこうという、産業界の努力というのは目を見張るものがあったと私は思います。

日本人、あるいは、日本の企業、産業の環境変化に対する適応能力の高さということに対して、私はもっともっと自信を持っていいと考えております。決して悲観することなく、この問題をピンチではなくチャンスだととらえるべきだと考えています。

さて、ここで民主党の考え方を少しお話をしたいと思いますが、先日、地球温暖化対策基本法案を国会に提出をいたしました。この中身を説明したいと思います。

骨格だけ申し上げますが、まず中長期目標を法律の中に書きました。中期目標として、2020年までに温暖化ガスの排出量を、基準年の1990年に比べて25%削減するとしています。バリのCOP13でも先進国の義務として25%から40%減ということが言われました。30%とか40%とか書きたかったんですけれども、今既にかなり増えているという現実を見ると、それは少し現実離れしているということで、最低限の責任としての25%という数字を設定いたしました。

そして、2050年までのできるだけ早い時期に、1990年比で60%を超える削減を実現するというふうに書きました。これは法律の書き方の問題でありまして、福田総理が言っておられる2050年に60%から80%削減ということと中身としては同義だと考えております。

そのほかに、再生可能エネルギーでありますとか、原子力の安全に関する技術でありますとか、そういった革新的な技術開発の重要性ということも書き、そして、省エネルギーの指標の合理化とか、COの「見える化」についても法律の中で明記をさせていただきました。

中長期目標については、アメリカや途上国の責任が明らかでない中で、日本がみずからを縛ることになるのではないかという意見があります。しかし、これは少しおかしな議論ではないかと思います。インドや中国が削減目標を示していないから、日本が中期目標を今明らかにすることは控えるというのはそれは一つの議論としてはあるかもしれません。しかし、インドや中国といった国々は、むしろ先進国がまず責任をきちんと果たせというふうに言っているわけであります。

ですから、彼らを巻き込むために日本が中期目標を今示すべきなのに、それをしないというのは全く私には理解のできないことです。むしろ日本がきちんとみずからの責任を示すことが、これから豊かになろうとする国々を巻き込んでいくためには必要なことだと、最低限必要なことだと考えております。

それから、国内排出量取引制度とか、あるいは、地球温暖化税、炭素税というのは、いわば炭素に価格をつけるということであります。したがって、価格メカニズムを活用しながら温暖化ガスの排出量を減らす非常に合理的な制度であるというふうに基本的には考えなければならないと思います。

確かに、キャップ・アンド・トレードのときのキャップをどうかぶせるかという、ここの問題は残ります。産業界がそれを非常に心配しているというのもわかります。しかし、そうであれば早く議論を始めなきゃいけないんですね。つまり、導入するということをきちんと決めて、その上でどういう制度にすべきなのか、そこで産業ごとの実態をどう反映すべきなのか、について議論を詰めるべきです。あるいは、先ほど議論が出ておりましたが、例えば日本の鉄鋼業と中国の鉄鋼業でエネルギー原単位が大きく違う。じゃあ、そういうことを日本のキャップをかぶせるときにどういうふうにして織り込んでいくのか。そういう制度設計の議論をきちんとすべき時期だと思います。

そのためにも、早くやるという意思決定はしなければならないと私たちは考えます。我々は、2010年度から排出量取引制度を創設するという前提で、今すぐ議論を始めるべきだと、こういうことを申し上げているわけであります。

それから、そういうキャップ・アンド・トレードについて早く我々の蓄積をつくりませんと、これは全くルールメーカーになれないということも重要だと思います。どんどんEUは進んでいきます。そういう中で、我々が単にできたものを受け入れるしかないという選択は避けたいと考えているわけです。

それから、新エネルギーについて、我々は2020年までにエネルギー供給の10%を新エネルギーで、再生可能エネルギーで満たすということを盛り込みました。このことについては、ドイツでは固定価格制度の中で太陽電池を急速に進展させてきました。私も昔、太陽電池など新エネルギーを通産省で担当していたこともあります。30年ぐらい前ですが、最近のドイツにおけるこの産業の発展の結果、日本がいつの間にか少し遅れてしまったことは非常に残念なのですが、やはり日本の場合は国内のマーケットが小さいということはかなり決定的だと思います。

日本の太陽電池メーカーのおそらく80%ぐらいは海外に市場を求めていると思います。やはり日本自身が国内マーケットをつくり出すということは非常に重要なことで、そういう意味で、固定価格買い取り制度というのは参考にすべき制度ではないかと思っております。

さて、政府の考え方について少し批判的に申し上げたいと思います。

6月9日に「福田ビジョン」が示されました。それから、昨日、このシンポジウムで福田さんがお話をされました。私は福田総理がこの地球温暖化問題に熱心に取り組もうとしているという、その姿勢は評価をしております。今までの総理とは大分違うと考えます。しかし、残念ながら、福田総理の言われる今の日本政府の考え方というのは、その意欲とうまくミートしてないんですね。空回りしているという感じがいたします。総論と各論が一致してないということです。

私は時々福田さんの演説を聞いていて、総論で非常にすばらしいことをおっしゃるのに、具体論になると後退されますので、どっちがほんとうの福田さんなのかということを時々感じてしまいます。昨日の総理演説もそういう感じを非常に持ったわけであります。

まず、中期目標については、先ほども少し触れましたが、総理は来年度に明らかにすると、設定すると言われました。現時点では全く示されておりません。そして、試算値が示されました。2005年を基準にしてマイナス14%という試算値が示されました。

しかし、これは1990年を基準にすると、実質的には4%の削減にすらならない。森林吸収などを除いてしまいますと、4%の削減にすらならないんですね。1990年から2005年まで日本は増えており、「福田ビジョン」はその増えたところをベースにします。このベースを1990年にして換算すると、ごく少ない削減にしかならない、とこういうことであります。

EUとの比較で同じように14%ということも言われたわけですね。2005年を基準にEUも14%、だから、日本も14%。しかし、EUは1990年から2005年までの間に随分減らしてきたんですね。減らした結果、2005年を迎え、それを基準にしている。日本は1990年から2005年に向けてずっと増やしてきた。増やした結果、そこかを基準にして、同じ14%だというのはフェアな見方だとは言えないと思います。

もちろん、1990年という基準年がさまざまな点で日本にとって不利な問題があるという議論はわかります。しかし、それはそれできちんと議論をすればいいと思います。ただ、福田さんは中国、インドにとっても90年より2005年のほうがいいと言われましたが、わかる人はわかっているわけですね、基準年を2005年にして最もメリットを受けるのは日本であると。

そういう立ち位置にある日本のリーダーが2005年ということを声高に主張するということについて、私はいかがなものかと思います。そういうことでリーダーシップが発揮できるんだろうかと、自分のことだけ考えているんではないかと、そういうふうに見られてしまうのではないかということを非常におそれるわけであります。

もちろん基準年を1990年に絶対しなければいけないと私が思っているわけではありません。アメリカやインドや中国との話し合いの結果、2005年がよりわかりやすいということになれば、それはそれで一つの議論としては当然あると思います。ただ、日本が2005年を声高に言うことはいかがなものかと、そういうふうに考えているわけであります。

それから、セクター別アプローチですけれども、先ほど来のさまざまな話がありましたけれども、実はG8の環境大臣会合では既に国別総量目標にかわるものではないということが合意されているわけですね、環境大臣会合では。それから、この前、日曜日の日曜討論、NHKテレビでも、川口元環境大臣はそのことを明言されました。つまり、国別目標というのはそれはそれでつくるのであって、セクター別アプローチでつくるんじゃないと。

ところが一方で、福田さん自身の話は極めてあいまいであります。セクター別積み上げによって国別総量目標を設定しようとしているのではないのかなというような表現もあります。そうすると、環境大臣会合での合意というのは何だったのかと、こういうことにもなるわけであります。

きのう福田さんはトップダウンで国別目標を定めるやり方を押しつけるやり方で、全員参加が実現できるのかと批判をされました。そして、各国が実現可能な数字はどれだけなのか、それを見定める必要があると、こういうふうに言われました。

しかし、これは最初に私が申し上げたIPCCの結論、2050年に半減しなければいけないと科学が既に結論を出して、それをいかに実現するかが政治だという考え方からすると、できるものはしっかりやらなきゃいけないんだという福田総理の考え方は、逆転した考え方ではないかと思います。

実際に国別目標の数字が実現できるかどうかというのは政府がどういう枠組みを設定するかによっても変わってくるわけですね。ですから、できる、できないというのがまずアプリオリにあるんじゃなくて、どういう枠組みのもとでそれを実現していくかと、そういう議論をしっかりと行わなければならないと考えております。

それから、国内排出量取引につきまして、福田さんは福田ビジョンの中で、問題点を洗い出すのに時間と労力を費やすのではなくて、より効果的なルールを提案するぐらいの積極的な姿勢に転ずるべきだと言われました。これは非常に高く評価できる発言であります。

しかし、現実には政府の対応はそうはなっていないわけで、まだ国内排出量取引制度についていつから導入するのかということは全くコミットされておりません。そして、試行的な実施の開始ということは言われたわけですけれども、これは義務的な削減を伴うものとはなっておりません。そういう意味で、総理の意欲は買いますけれども、具体的な動きとしてはまだ数年先の話と、おそらく京都議定書に定めた2012年以降の話としてお考えなのではないかとも思えます。それでは私は遅過ぎると考えております。

いろいろ申し上げましたが、ちょっとまとめをしたいと思います。